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「畜生」とは何か

国語辞典をひも解き「畜生」について調べてみると、以下のような意味であると記されている。

一、 鳥・獣・虫魚の総称。人間以外の動物。
二、「畜生道」(仏教での六道の一)の略。
三、人を憎んだり、ののしったりしていう語。感動詞的に、怒りや失望などの気持ちを表すときにも用いる

二と三は兎に角、畜生の意味は人間以外の動物とある、家畜は人々が餌を与え育て、適当な大きさに太った処で、我々の生命を繋ぐ貴重な糧となってくれる意味では極めて有益且つ無くてはならない、有難く感謝すべき存在と言える。

では社畜はどうか。社のために生命のすべてを捧げて生活も家族も何にもかもを放り出して「仕事が最優先」とのたまう輩の事を云うのであろう、国語辞書風に云えば、企業へ自ら生命を差し出す奇異な人間の一種、主に日本列島に生息する、と言った処か。

今の職場は大手のメーカープロパーの社員とその子会社の社員が業務を司り、子会社の社員は主に業務の内容や技術的な面を管理監督している、彼らは当たり前のように毎朝は七時過ぎには集まり業務を始めて深夜は二十二時に十三時まで帰らない、土曜日曜も当たり前のように出勤をしている、このような連中が典型的な「社畜」と云うものであろう、彼らの価値観として社畜人生に人生と生命のすべてを掛けていると云うならば、それはそれで私が知ったことではないけれど、私及び私どもの外注会社を巻き込まないでもらいたい。

大手メーカーのリーダー的存在の社畜は、只管に「遅い」「本当に間に合うのか」「進んでいるという根拠は」「遅れるとは何事か気合が足らん」ど怒鳴り罵るだけの簡単な仕事をしている、予定が遅れているから一人増やしてやると、どこかから一人連れてきてこの人を使えと云うものの、基本的なOSコマンドも知らない打てない輩が増えた処で何んにも改善はしない。

その社畜であるプロパー奴は立場が強い事を利用して理不尽な要求を強要する、具体的には多大な業務を押しつける、午後六時までにはとても終わらない分量を押し付けるから、暗黙の裡に午後九時十時までの残業を強要する、それでも間に合わないので早朝の出勤と帰りは二十三時や二十四時と云うことになって、さらに足りなくて土曜日曜も出ざるを得ない。こちらはそれを拒否する立場では無いので強制されているのも同義でもある。

弱い立場の協力や下請けの社員は少しずつ精神的に追い詰められて更に追い打ちを掛ける、そのような事が日常的に行われているので、昨年末までに一人が出社をしなくなって業務が滞り始め一月にももう一人が来なくなって、それぞれの所属会社の責任者が無能社畜に呼び出され、責任を以て期限までに仕上げよと云う。

そのような訳で、押し付けられた大量の月曜日が納期と云う仕事がまったく間に合わなくて無能社畜は怒鳴り散らし、遂に深夜十二時前に職場を辞することができなくなって、到頭金曜日は徹夜作業になってしまった、朝の七時になっても三割も終わらない、草臥れたので帰ろうとしたら、無能社畜に呼び止められどうなっているかと問われたので、三割まで出来たが月曜納期は無理と回答、社畜の怒りに火をつけて油を注いでしばらく交響曲を聞くが如くにその罵声を伺った、そのうちに腹が立ったので怒鳴り返して机もばんばん叩いた、殴られそうになった処でクライアントの担当が驚いて飛んで来て仲裁に這入ろうとしたから思わず言ってしまった。

「うるさい、てめえには関係ない、いつものように被害者面してそこの席へ澄まして座ってろよ」

クライアントは開いた口が塞がらないというような表情になり、社畜は大慌てでお客様へ何て失礼な言葉をなぞと言い私の腕を掴み客の前へ座らせようとするから、それを振りほどいて知ったことかと、すると社畜が一人でクライアントの前で膝間付き土下座を始めたので馬鹿らしくなってそのまま帰って来た。

自社の社長へは事の次第をメールで報告、以前から酷い現場であると知らせていたから今月末で終了することは決まっていたけれど、それまで待てないから月曜から行くのをよすと云う旨も知らせた。長年の経験から自らの身は自ら守らねばならない、社長の決定を待たずに先手を打とうと思う。精神的に崩壊が始まる前兆を感じていたからでもある、勤務時間も二月分が280時間であるし、今月もすでに70時間を超えて合わせて二か月分の定時分になるのでそれでちゃらにしてもらいたい、そのようなつもりで居たら社長から電話が掛かって来た。

「よくぞ知らせてくれた。もう行かなくて良い。パワーハラスメント以外の何物でもないではないか。あとは善処するから月曜火曜は安心して休んでください、水曜日に次の現場の面接を組みますので仕事も心配はご無用」

そのような訳で月曜と火曜は緩っくり休もうと思う。

社畜には善い事を教えてやろう。

十頓積みのトラックには十頓の荷物を積む。これを能率的或いは効率的と言う。
十頓積みのトラックに五頓の荷物を積む。これを無駄と言う。
十頓積みのトラックに二十頓の荷物を積む。これを無理と言う。

効率や能率を理解せず無理を効率と勘違いしている馬鹿愚かどもは、この三行を読み勉強をし直すと良い。
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草木も眠る丑三つ時

やっと業務から解放されて時計を見たら午前一時、バスどころか電車の運行も今日はお仕舞い、宿泊を考えたけれどそれもめんどくさいのでタクシーに乗った、運転手へ少し遠いのだがどこそこまでと伝えると、今はナビゲーションがあるのであれこれと道を伝える必要も無い、郵便番号と住所を伝えて座席へ座り扉が閉じると、自動車はたちまち勢いも善く走り出した。

寡黙な運転手に当たったのは幸い、暫くは都心の風景を楽しむことにして、行く道の風景を眺めるでもなく眺めないでも無く凡やりとしていた、そう云えば自動車で真夜中の都会を通るのは十五年以上も前のことになるのかと、少しばかり昔の事を思い出したりしつつ、行けども行けども建物ばかりの風景を眺めながら色々と考えていたら、考える事のそのものがめんどくさくなって、うつらうつらしていたら我が家の前へぴたりと止まった。

代金は思いのほか高くはなく一万円でお釣りがあった程度、タクシー代金は会社が出してくれることにはなっているけれど、その代金は社の赤字になってしまうし残業代も社の赤字である、そのような理不尽な偽装請負契約は未だ全盛を極めている、大手の或いは最終顧客の下請けを虐げる猛威は未だ健在と言える。

湯浴びをして着替えて時計を見たら午前二時、草木も眠る丑三つ時、これからエビスを飲み簡単な肴を食べることにしよう、そうして明日は別件の仕事で出掛けるけども、昼前には出れば間に合うので幾らかは余計に眠られる。
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